TITANIUM・7

アダムはリリーの雑貨屋で働くことになった。客は一日に十人ぐらい。皆アダムをすぐに受け入れてくれた。リリーは学校から帰ってくるとすぐにアダムの元にやってきた。雑貨屋の品出しや、整理、発注をまかされた。リリーも手伝ってくれた。
たまにリリーの宿題を見てやった。アダムがは読み書きや計算ができる。雑貨屋のレジの仕事も簡単だからすぐに覚えることができた。
だがずっと捕われていたから、世の中のことを知らない。アダムは自分が思っていることを、正直にリリーに言った。
「僕は世の中のことを知らずに生きてきた。だからリリーにいろんなことをこれから聞くと思う。教えてくれるかい?」
リリーは最初、きょとんとした顔だったが、やがて大きく頷いた。
「いいよ。大丈夫。教えてあげる」
「ありがとう」
リリーは笑った。アダムの目を見て言った。
「アダムの目って、きれいね。黒いんだけど、奥が紫色みたい」
鉱物の人種の特徴だ。瞳は二色の色を持つ。アダムの母親もそうだった。アダムは照れくさくなって笑った。
「照れるな。ありがとう」

まるで別の人間のようだ。
ここに来てからのアダムはあそこにいた頃と別人生き生きしている。
(本来の姿がこっちなんだな)
マットは愛しい気持ちでアダムを見つめる。あそこから救い出して良かった。アダムの体の傷がまだ痛々しい。目立たないようにいつも長袖を着ているが、手の甲や首の傷が目立つ。

「マット。シャワー空いたよ」
ある夜。ソファーでうつらうつらしていたマットは、アダムの声にはっ。と目を覚ました。
「ああ・・・ありがとう」
「なんか珍しいね。マットがうたた寝なんて」
「生まれ初めてだよ」
「えぇ?嘘だろ」
アダムは楽しそうに笑った。マットも笑う。
うたた寝なんかしたら、殺されてしまうかもしれないから。基本睡眠も浅かったし」
アダムはマットの言葉に、笑顔を引っ込めた。そうだ。彼は敵を殺すために育てられた男だった・・・・
「俺の精神状態もよくなってきてるんだな」
マットは笑ってソファーから立ち上がった。アダムを引き寄せて、抱きしめる。突然抱きしめられてアダムは驚くものの、マットに包み込まれる暖かさに身を委ねる。
「君も、幸せそうだ」
マットの言葉にアダムは頷いた。
「君が連れ出してくれたから。ありがとう」
アダムは、マットの目を見た。真っ直ぐな瞳。アダムはマットの唇にキスをした。すぐに唇を離して、体も離そうとするとマットに再び引き寄せられた。
「嬉しいな。君からキスしてくれるなんて」
恥ずかしくなってアダムは俯く。マットの腕。腰・・・襟元から覗く鎖骨。それをみているとアダムの体の奥が熱くなる。
今まで感じたことのない感情。ひりひりと喉が焼けるような感覚。
「君を抱きたい。君を愛しているから。でも君は・・・もう、嫌だろう。そんなこと」
「抱いて」
アダムはマットにすがるように言った。マットの胸に顔を埋めて呟く。
「マットは、あいつらと違う。愛してくれるから」
「アダム」
マットはアダムを抱きしめてキスをした。アダムは涙を零す。頬を伝い涙が床に落ちる。それは紫の美しい結晶となって転がった。

それを求める者は誰もいない。そこにはお互いを求め合う愛し合う二人だけがいた。

抱き合いながらベッドに倒れ込む。マットはアダムの額や、頬に優しくキスを落とす。唇に辿りつく。薄暗がりの中見つめあって舌をからめてキスをする。濡れた音が室内に響く。
「ん、ゥ・・・・」
鼻にかかる甘い喘ぎをアダムは零した。かわいい。とマットが耳元で囁くと、かわいくない。とアダムは笑った。マットはアダムの耳たぶを甘噛みする。びく。とアダムの体が震えた。
マットはシャツを脱ぐ。アダムは濡れた瞳でマットを見上げ、そっと腹筋に手を這わせた。
「傷がある・・・大きい傷だね」
マットは笑った。
「死にかけたことがある。ジョゼフをかばって」
マットはアダムの手に自分の手を重ねた。そのまま手を取ってキスをした。ん。とアダムは声をあげる。
「優しいんだな。アダム」
アダムは笑った。マットはアダムのシャツを脱がせて、胸に手を這わす。
「あ、あぁ・・・・マッ、トぉ」
胸を優しく揉みしだき、乳首を転がす。体を震わせて、アダムは感じいった嬌声をあげる。マットは興奮する。ターゲットの女を何度も抱いたことはあるが、心から愛する人間を抱くのは初めだ。アダムのペニスに触れる。硬くなって、先端から先走りの液が溢れてきた。
「マット。好き」
アダムは切なげな声をあげる。涙がこぼれ、枕に落ちる。結晶となってベッドに転がる。アダムは笑った。
「涙、舐めてみる?」
いや。とマットは首を横に振る。そんな必要はない。
「俺も君が好きだ。愛してる」
「マット」
アダムはマットの手を取った。そして、その手を自分の股関に導く。マットは少し動揺する。
「アダム?」
「ここ、触ってみて」
はっ。と息を飲むマット。
「アダム。これは」
アダムは笑った。マットのペニスに触れて、言った。

鉱物の人種はね、好きな人のために体を変えることができるんだ。

「マットの子供、ほしい。ここに、ちょうだい」
「アダム」

二人は強く抱き合う。マットはアダムのそこに、ペニス挿入する。キスをして、最初はゆっくり動く。アダムはマットの背中にしがみつくように抱きつく。
「アダム。つらくないか?」
「だい、じょうぶ、ん、ア・・・っ!!」
「初めてだから、痛いんだろ?」
「平気だから・・・」
アダムはぽろぽろと涙をこぼしながら笑う。アダムのそこは暖かく、きゅうきゅう締め付けてくる。マットはアダムの額にキスをして再び動き出す。
「奥に、ちょうだい」
「分かった」
二人はキスをした。その瞬間、マットも射精した。
「くっ・・・」
「あ、あぁ・・・・・・つ!」
二人はしばらくそのまま抱き合っていた。マットはアダムの顔を見た。

上気して赤らんだ頬、濡れた瞳、赤い唇は唾液で濡れて、うっすらと開いている。やがてアダムは、にこりと笑った。マットも笑った。

二人はそのまま抱き合って朝まで眠った。

朝方、アダムはマットの腕の中で一人目を覚ました。マットの顔を見る。眠っているとあどけない顔をしている。アダムは幸せな気持ちになる。
自分の下腹を撫でた。ふ。と笑う。

多分、生まれてくるのは 女の子。