2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

Dementia・5

そう。今、俺とアダムは法律を犯しているんだ。それはのちのち話すとして、俺がゾンビになった経緯を話そうと思う。あれは夜の街にアダムと二人で食事をしに出かけたときだった。夜の街は平和だった。二人で入ったバーでカウンターに座った。カウンターから…

Dementia・4

ドーナルの日記から。日付は一ヶ月ほど空いている。 ハイチで死者が蘇ったのが一ヶ月前だった。あっと言う間にゾンビは世界に蔓延した。だが、世界情勢はそんなに変わらなかった。今もインターネットができているし、朝が来れば起きるし、夜が来れば寝る。隣…

Dementia・3

アダムの日記から。 一緒に住むようになって三日後に、ドーナルと初めてセックスをした。セックスは前からそんなに好きではなかったが、ドーナルに抱かれて大好きになってしまった。まさかこの年で・・・すごく恥ずかしいが、好きになったのだから仕方ない。…

Dementia・2

ドーナルの日記から。 アダムと初めて出逢ったとき、俺は運命だと思った。彼はきれいで、優しい男だった。珍しいほど控えめで、シャイだった。そこがかわいい。死ぬほどかわいいと思った。俺は彼を好きになった。いや。愛してしまった。撮影の最終日を逃した…

Dementia・1

アダムの日記から。日付は丁度一年前となっている。 僕とドーナルは映画の撮影で知り合った。あまり喋らなかったし、このまま関係性も取れずに終わるのだろうと思った。最終日に、真剣な面持ちでドーナルが僕の所へやってきた。僕はペットシッターさんから送…

アローン・7

先生に覆いかぶさっていたカートは、顔をあげるとにこりと笑った。口元は血まみれだ。得体の知れない肉の欠片がぶら下がっている。カートはそれを飲み込むと笑った。「君のためだよ」僕の髪の毛をなでて、カートは笑った。「すべてを忘れてしまった僕に、生…