Dementia・2

ドーナルの日記から。

アダムと初めて出逢ったとき、俺は運命だと思った。彼はきれいで、優しい男だった。珍しいほど控えめで、シャイだった。そこがかわいい。死ぬほどかわいいと思った。俺は彼を好きになった。いや。愛してしまった。
撮影の最終日を逃したら二度と逢えない。俺はアダムを物陰に連れ込み愛を告白した。涙が止まらなかった。鼻水も出そうになった。アダムは俺を抱きしめてくれた。そして僕も好きだよ。と言ってくれた。ああ。彼も同じ気持ちだったのだ。
俺は気持ちが抑えきれなくなって、アダムにキスをした。緊張していたアダムの体から力が抜けていく。俺はどさくさに紛れてアダムの胸に触った。ふわふわとした感触に俺は興奮したが、最初から飛ばすと嫌われてしまう。そもそも愛を告白してすぐにキスするのも飛ばしすぎだが、まぁいいや。
唇を離すと、アダムはとろんとした目で俺を見て、ふ。と優しく微笑んだ。だめだ。最高だ。俺はアダムを強く抱きしめた。アダムは俺の耳元で囁いた。
「ずっと君といたいな」
俺はアダムの頬に触れて笑った。
「じゃあ一緒にいよう」
「えっ」
「嫌?」
アダムは、顔をふるふると横に振る。
「嫌じゃない・・・」
「良かった」
「嫌なもんか・・・」
アダムも泣きそうになっていた。俺は笑ってアダムの手を握った。

アダムには、ムースという犬がいた。だから俺がアダムの家に転がりこむことになった。お互い好きになって一週間のスピード展開。自分でもビビってしまう。ムースは最初、怪訝な顔で俺を見ていたが(犬でもああいう顔をするんだな。と感心した)やがて懐いてくれた。アダムもそれに安心した様子だった。周りから何も言われてない?とアダムは心配そうな顔をする。ん?何を言われるんだ?と俺が言うと、ムースを抱き上げながら、アダムはぼそぼそと言った。
「僕なんかと一緒に住むなんて」
「僕なんか?今僕なんかと言ったか?」
俺はアダムの頬を両手で挟んで、唇にキスをした。すぐに唇を離して、彼の目を見た。
「あんまり馬鹿なこと言うなよ」
「ごめん・・・」
「俺と一緒にいれて嬉しくない?」
「嬉しい・・・」
「もっと言って」
「嬉しいです」
俺とアダムの間で、きょろきょろとしていたムースが、ぺろ。とアダムの頬を舐めた。はは。とアダムは嬉しそうに笑った。俺も笑った。その笑顔を見て、アダムは俺に抱かれたらどんな顔をするんだろう。と思った。俺はアダムが好きで仕方ないのだ。