博士🍩×人造あだむの話の冒頭

昔、昔あるところにアダムという男がおりました。アダムは背が高く、気持ちの優しい男で、真面目で働き者でした。贅沢な暮らしができる稼ぎはありませんでしたが、優しい妻と、生まれて半年の娘がアダムにはいました。文句一つ言わずアダムに寄り添う妻と、抱き上げると声をあげて笑う娘。アダムは二人が愛しくて仕方ありませんでした。アダムは自分の人生は、とても幸せだと思っていました。

ですが、そんな幸せな人生は突然終わりを告げました。戦争が始まったのです。

アダムが住んでいた国は、敵国の兵隊が攻めてきて侵略されました。
寝ていたアダムと家族は夜中に突然ドアを壊して侵入してきた兵隊たちにより、起こされました。
アダムは殴られ、床に叩きつけられました。何もしていない、無抵抗のアダムを兵士たちは笑いながら嘲り、殴ったり、蹴ったりしました。アダムの妻は悲鳴をあげ続けました。ベビーベッドで泣き叫ぶ娘に手を伸ばしましたが、兵士が横から笑いながら娘を抱き上げました。そして思い切り娘を床に叩きつけました。妻は絶叫しました。娘はもう二度と、声をあげませんでした。
アダムは片方の目の前が見えなくなってきました。それは兵士がアダムの目をめがけて蹴り上げたからでした。銃底で激しく顔を殴られ、腹を蹴られてアダムは血を吐きました。
妻は何人もの兵士に犯されました。アダムは声が出ませんでした。声帯すら傷つけられるぐらい、喉も蹴られたからです。兵士たちはアダムの目の前で妻の首を締めて殺しました。
アダムは、そのまま意識を失いました。

再びアダムが目を覚ましたとき、辺りはすっかり朝でした。アダムは這いつくばって外に出ました。なんとか立ち上がりましたが、片方の足が折れている様子です。アダムは辺りを見回しました。
家は破壊され、村人たちは全員死んでいました。アダムは呆然と辺りを見回しました。生き残っているのは自分だけの様子です。アダムは再び倒れ込みました。大声をあげて、泣き叫びました。村人たちが流した血溜まりの中、アダムは哀しみに暮れました。声を絞り出しました。
「・・・・・殺してくれ・・・・」
足音が聞こえました。アダムは顔をあげました。限られた視界の中で現れのたのは兵士の物とは違う、黒いスラックスを履いた二本の足でした。げほ。と咳をします。
「・・・見つけた。俺と行こう」
男の声です。男は咳をしながらアダムを自分の肩に寄りかからせました。以外に力持ちの様子です。アダムは自分の隣の男の顔を見ようとしましたが、赤い髪の毛がちらりと見えただけで、よく見えませんでした。
「頑張って歩いて。着いたら手当してあげるから」
アダムの目の前に、大きな館が現れました。
「こっちに来て。すぐに手当できるように」
男に導かれて、アダムは白い壁の部屋にたどり着きました。ベッドに仰向けに寝かされると、アダムはそのまま気を失いました。