美大生ドーナル×シングルファーザーアダムの最終章

ドーナルがアダムに愛を告白してから丸一日が経とうとしていた。ドーナルは夜勤のアルバイトをいれて部屋には戻らなかった。それは前から言っていたことだったのでアダムもわかっていた。
(偶然でも助かった・・・)
朝方に戻ってきたドーナル。ローズは保育園。アダムは大学に出勤している。とりあえず会わずに住む。ドーナルは合鍵を使って玄関を開けた。廊下を歩く。
「おかえり」
リビングから声をかけてきたのはアダムだった。ドーナルは途中コンビニエンスストアで買ってきた買い物袋を盛大に落として、中身をぶちまけた。ああ。とドーナルは呻いて中身を拾う。アダムもそれを手伝った。アップルジュースをドーナルに渡してくる。ドーナルはそれを受け取った。ぼそりとアダムは呟いた。
「アップルジュース、うちにもあるのに」
ドーナルもぼそりと返した。
「ローズも飲むだろ。アップルジュースは」
「そんなに気を使わないでいいのに」
「な、なんで今日君がいるんだ?大学は?」
「インフルエンザ大流行で休講になった」
「そうか・・・」
ドーナルはため息をついた。
「ごめん。昨日変なこと言って」
恐る恐るアダムを見ると、顔が真っ赤だった。耳まで赤い。ドーナルは、アダム?と名前を呼んだ。
「・・・・大丈夫?」
「僕も好き」
「えっ」
「ドーナル。君のことが好きだ」
アダムは顔を赤らめたまま、ドーナルを見つめて言った。ドーナルは真顔のままアダムを抱きしめた。アダムも恐る恐るドーナルの背中に腕を回した。
「本当に・・・?」
うん。とアダムは頷く。
「初めて会った時から・・・好きだと思ったよ」
「良かった」
ドーナルはアダムの頬にキスをする。怯えているような、でも安心したようなアダムの笑顔。ああ。彼とこれからもずっといたい。彼を守りたい。
お互い同じ気持ちだったことが妙に照れくさく、もじもじと立ち上がる。アダムが言った。
「ドーナル・・・・今日、ローズはお泊り保育なんだよ」
「お泊り保育」 
「だから、今夜二人きりだよ」
アダムはそれだけ言うと、リビングに戻ってしまった。夜勤明けのぼんやりした頭と体にはあまりにも強烈すぎて、ドーナルはしばらく立ち尽くしていた。やがて自分が笑っていることに気付いた。これでは休みたくても、休めない。
「幸せすぎてやばいぞ」

「ドーナル・・・・」
深夜。ベッドで二人はお互いの体温を感じあっていた。ドーナルもそれほど経験は豊富ではなかったが、アダムは多分、妻としか経験がなかったのだろう。ぎこちなく、硬い体はドーナルの腕の中でだんだん熔けていく。
(逆にそれがセクシーだ)
ベッドに座ったドーナルに、アダムが向かいあって跨がる。さらけ出されたアダムの白い体にドーナルは興奮する。腹を撫で、胸にキスを落とす。
「あ、あぁ・・・・ドーナル、ぅ」
「愛してるよ」
「僕も・・・一緒にいれるのが、嬉しい」
二人は見つめあい、笑う。
ドーナルの頭の中のキャンバスに、個展に出す作品のイメージが浮かび上がる。アダム。とドーナルは名前を呼ぶ。何?とアダムはドーナルの髪の毛を優しく撫でて返事した。
「個展に出そうと思っていた作品、やっとイメージついた」
「良かった。どういうの?」
ドーナルは、アダムにキスしながら言った。
「君のような、女神を描こうと思うんだ。優しく、慈愛に満ちた女神だよ」