はちゃめちゃパーティーナイト・2
ブレンドンがサキュバスだということは、俺がツアーサポートメンバーとしてバンドと一緒に活動している時に分かった。ツアーに入って三日目にブレンドンに襲われたのだ。目を見てしまうとだめだった。体が動かなくなり、痺れるような感覚に陥る。
「 僕を見て。きれいだろ?セクシーだろ?僕に触りたくて仕方ないだろ?」
俺の上に跨がって、俺の手を取るブレンドン。手の甲にキスしてくる。唇をぺろりと舐めあげて笑った。その舌はさっきより長くなって、先が割れていた。そのままソファーに押し倒された。ブレンドン。と俺は恐怖と興奮で掠れた声をあげた。
「 お前、何なんだ」
上半身裸だったブレンドンの背中から、黒いコウモリのような羽根が生えてきた。ブレンドンは少し困ったような顔で笑うと、首をかしげた。
「 僕もよく分からないんだ。気付いた時からずっとこうだった。ただ一つ分かるのが」
「 君みたいなハンサムはずっと大好きだっていうこと」
「あぁ。すごい元気になった」
ブレンドンは俺から離れると、うーん。と気持ちよさそうに背伸びした。俺に背を向けて、テーブル上に置きっぱなしのスマホをいじり始めた。まだ出っぱなしのサキュバスの尻尾が俺の目の前で揺れている。俺はその尻尾付け根をぎゅっと掴んだ。とたんにブレンドンは体を硬直させて、スマホを放り投げて悲鳴をあげた。
「 んぎゃっ!!!!」
「 あ、ごめん・・・」
ブレンドンは尻尾付け根を抑えながら言った。
「 やめてよぉ・・・急所なんだから」
「 あ、そうなの?」
ブレンドンは尻尾を消して頷いた。
「 掴まれ続けると動けなくなっちゃうんだ」
「 へぇ」
さて。と、ブレンドンはシャツと上着を着ると、靴を履いた。俺は訝しげにその様子を見つめた。
「 おい・・・どこ行くんだ」
ブレンドンは得意気に胸を張って答えた。
「 夜の町に行ってきます」
俺はため息をついた。ツアー中のブレンドンの「 恒例行事」だ。ブレンドンに言わせるとこうだ。
だって、観光に行ったらみんなお土産を買うじゃない。自分用のさ。思い出作りたいよね。それと一緒だよ。僕がいろーんな所で男と寝るのは。
ふと、ほんの近くにブレンドンがいた。ブレンドンは俺の髪の毛を撫でて笑った。
「大丈夫。僕の本命は君だから」
「あのさ」
「何?」
「気をつけて・・・」
ブレンドンは背伸びして俺の頬にキスをした。ブレンドンはサキュバスだから体臭が甘い。イチゴの香りが俺の鼻をつく。またね!とブレンドンは部屋を出て行った。 独り残された俺はまた盛大にため息をついた。
今夜も殺すのか・・・
「 ブレンドン・ユーリじゃないか?」
夜のクラブで声をかけられて、ブレンドンは振り向いた。背の高い男だった。茶色の明るい髪の毛。黒いシャツに膝に穴の開いたジーンズ。鍛えあげられた体をしていた。ブレンドンはダロンと関係を持つようになってから背の高い男が好みになっていた。ううん。とブレンドンは首を横に振った。
「 よく言われるんだけど違うよ」
「 いいや。間違いない」
男はブレンドンの肩に手を置いた。中々のハンサムだ。ディーン・デハーンに似ている。ブレンドンはその手を取った。かけていた眼鏡を外して、柄をくわえた。
「 本物かどうか、確かめてみる?」