December・2

アダムは生まれる前から祝福されない子供だった。母親のオーガスタは元々情緒不安定で、鬱の傾。向がある女だった。若いうちから抗鬱剤を服用していた。ただ、美しかった。テキサスの田舎にはそぐわないブルネットの美しい髪の毛のオーガスタは、男たちの劣情を煽らずにはいられなかった。オーガスタは汗臭く、粗暴な田舎の男たちの誘いを全て断っていた。繊細なオーガスタは、男たちを嫌悪していた。 そんなときオーガスタは、ジョージと出逢った。ジョージは畜産業を営んでいた。ジョージは他の男と違って、優しく、穏やかだった。本を読むことが好きで休日はダイナーでコーヒーを飲みながら本を読んで過ごしていた。その横顔にオーガスタは心を奪われた。背が高く、大柄なジョージ。深いブラウンの瞳がきれいだと思った。オーガスタが勤めているダイナーによく来ていたので、ジョージとオーガスタが恋愛関係になるのに時間はかからなかった。 だが、ジョージはある夜、豹変した。酒を飲んで酔っていたジョージは、オーガスタが一人で暮らしていた家の窓を割って浸入し、寝ているオーガスタを無理矢理犯したのだ。悲鳴をあげるオーガスタの口にタオルを突っ込み、頬を殴って、何度も犯した。ジョージはげらげら笑いながら絶望しているオーガスタの耳元で囁いた。

「お高くとまりやがって。アバズレのくせに。ずっとこうされたかったんだろ?」

ジョージは満足して家を出て行った。オーガスタは呆然と天井を見上げていた。ジョージは二度とオーガスタの前に現れなかった。畜産業を閉めてテキサスから出て行ってしまった。残されたのは二十歳のオーガスタと、そのときに授かったアダム、だけだった。 オーガスタは早くに両親を亡くし、親戚とも疎遠だったので本当に天涯孤独だった。臨月に入ったオーガスタは、地下室で一人、泣きながらアダムを出産した。血まみれで大きな声をあげて泣くアダムをオーガスタは一瞬、殺してしまおうかと思ったが、その胸に抱いて囁いた。

「私の哀しみと、絶望を全部教えてあげるからね。私のかわいい息子。名前はね、アダムよ。いい名前よね。だって地球で一番最初の人間っていう意味よ」

オーガスタはアダムを出産して、完全に精神のバランスを崩してしまった。子守唄を歌いながらオーガスタはアダムを毛布にくるみ、いつまでも笑っていた。 アダムは穏やかで優しい子供だった。だからオーガスタの全てを五歳の頃から受け入れた。食事をほとんど取らずに、オーガスタは抗鬱剤と酒を浴びるように飲んだ。アダムのぺニスを引っ張り、泣き喚いた。

「アダム。あんたもいつかこれで女を犯すんだろうね。私があんたの父さんにやられたみたいに!!そんなことする前に、ちょんぎってやろうか!」

まっさらだったアダムの心に最初についた知識は、体についているこのぺニスは忌まわしいものだいうことだった。これが母親を苦しめるものだ。これが母親を悲しませる。だからアダムは母親にしがみついて、何度も首を横に振った。

「そんなことしないよ。ママ。そんなことしないから。許して」

十歳の頃になると、アダムは小柄なオーガスタより背が高くなっていた。オーガスタはジョージを思い出し、アダムを地下室に閉じ込めた。丸一日放って置かれたアダム。成長期のアダムは耐え難い空腹を覚えた。地下室にいた蜘蛛や、埃を食べて過ごした。いつでも閉じ込められていいように、近くの店で万引きしたチョコレートやガムをポケットにいれていた。

ある朝、アダムは精通を迎えた。自分の意志と裏腹に忌まわしい部分が成長している。アダムは絶望と恐怖を覚えた。寝ているオーガスタを起こさないようにようにそっと家を飛び出した。恐ろしい。こんな箇所なくなってしまえばいい。アダムは納屋に忍び込み、石でぺニスを潰そうとした。その時、納屋の外から小さな歌声が聞こえた。 そっと見てみると、四歳ぐらいの女の子が歌を歌いながら猫を抱いてこちらに背を向けていた。

「リリー。だめだよ。おうちに帰ろうね」

にゃあ。とリリーが鳴いた。アダムはぼんやりと女の子の小さな金髪の頭を見つめ、持っていた石で力いっぱい殴った。リリーは女の子の腕から逃げて行ってしまった。 アダムは女の子の頭を何度も殴った。女の子は既に死んでいた。アダムは女の子を仰向けにして、衣服を脱がして裸にした。アダムは、幸せな気持ちになって女の子の髪の毛を撫でた。裸を撫でていると恐怖もなくなってきた。

「おなかすいたなぁ」

アダムはぼんやりと呟いた。最近オーガスタはアダムの食事も忘れることがある。アダムは自然に女の子の頬の肉に噛みついて、引きちぎった。咀嚼して、飲み込んだ。 アダムは初めて安堵を覚えた。自分が生きていく方法が見つかったのだ。それからアダムは小動物を殺しながら性欲を抑えた。学校は小学校しか行っておらず、十三才の頃からいろいろな仕事を手伝い、金を稼いで全部自分だけの食費に注ぎ込んだ。オーガスタは何も言わなくなった。ずっと、アダムを忌み嫌っていた。ジョージにそっくりね。女を犯しに行くのね。忌まわしいわ。アダムは黙ってそれを聞いていた。夜な夜なピックアップトラックに乗って、ヒッチハイカーの女や、街に立つ娼婦の女に声をかけて殺した。女の乳房や、頬、太ももの柔らかな部分をナイフでそぎ落とし、生で食べてウォッカを飲んだ。死体はテキサスの荒野に捨てた。行方不明者に溢れているこの国に感謝した。優しく、穏やかなアダムが殺人鬼なんて誰も疑わなかった。 アダムが二十四才の時、オーガスタは死んだ。アダムは独りになった。いや。たまにオーガスタの声は聞こえてくるから独りではなかった。 沸き上がる性欲は忌まわしいものだから、ぺニスには触らずに肛門に異物を突っ込んだり、乳首をいじって達する術を覚えた。大好きなスリップノットを爆音で聞いてするオナニーは最高だった。 オーガスタがいないと、堂々と死体をバスルームで解体できる。日雇いの工事現場で働いているアダムはその夜、スリップノットの聴きながらバスルームで女を解体した。

「小柄だと楽だなぁ。三日分ぐらいかな」

アダムは純粋な目をしながら女を解体する。大きな乳房を切り落とし、にこりと笑った。

「岩塩のステーキにしよう。あとはビール」

明日は仕事も休みだし、ゆっくりと解体しよう。アダムは乳房を持って鼻唄混じりでバスルーム出た。