world's end girlfriend・2

ゾンビが発生したのは丁度二十年前のことだった。ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッドと同じ、土葬される寸前だった死刑囚の死体が甦り、人々を襲い始めたのがきっかけだった。 ゾンビに噛まれたり、傷をつけられたら感染してゾンビになる。数年後研究者が発表した「ゾンビの思考回路」はかなりの衝撃だった。

 

ゾンビは常に空腹です。我々人間は空腹であっても特に「苦痛」ではありません。ですが、ゾンビにとって空腹は「苦痛」でしかないのです。だからやつらは「苦痛」から逃れるために我々人間を襲って食らうのです。

 

爆発的に増えるゾンビたち。人類は絶望していた。だが発生して五年経ったとき、研究者の前にとんでもない者たちが現れた。 そこはカリフォルニアだった。ゾンビに溢れ返って死滅した都市。研究者たちはそこに再び降りたった。後は数十人の軍隊。彼らが目にしたのは、縄跳びをして遊ぶ子供たちだった。呆然としていると、子供たちは笑顔向けて手を振ってきた。彼らはゾンビではないのか?ここはゾンビにやられた都市ではないのか? すると大人たちがやってきた。軍隊たちは銃を構えた。大人たちは全員手をあげている。その中の一人が叫んだ。

「 撃たないでくれ!!俺たちはちゃんと理性がある!撃たないでくれ!」

「 君たちは人間か?」

研究者の問いに、彼らは首を横に振った。

「 いや・・・ゾンビだ。間違いなく。ここにいる者全員がゾンビ襲われた。傷跡がある。鼓動もないし、体温も低い。だが俺たちは、意思があるんだ!!!」

 

それは俺も覚えているニュースだった。大人が三人。子供たちが三人。彼らの写真や画像は世界中に拡散された。この六人が一番最初の「ハーフゾンビ」だった。ゾンビに襲われても ゾンビ化せずにいられる奇跡の存在。この違いはなんなのか?研究者たちはこぞって研究した。だがその原因は分からないままだった。分からないまま「 ハーフゾンビ」たちは世界中で次々と発見された。ゾンビの数はだいぶ減った。今は政府が管理している地域にしかいない。

「 ハーフゾンビ」たちの特徴は多々ある。それは俺の恋人アダムにも見られる。

「 今日はパスタだよ」

アダムは俺の前にカルボナーラパスタの皿を置いた。

「 ありがとう。アダムも食べろよ」

「 うん」

アダムは俺があげたガーベラの花を花瓶から一本取った。きれいでかわいいガーベラの花びらに、はむ。と噛みついて、ぶち。と食いちぎった。俺はそれを愛しい気持ちで見つめて、パスタを食べた。自分が食べれないのにアダムは毎回毎回俺ためにメシ作ってくれる。 アダムの右の口元には赤い傷がある。二センチぐらい抉れているその傷は深く、アダムは口を閉じていても、歯が見えるぐらいだ。 それはゾンビに襲われたときの傷だ。

「 ハーフゾンビ」の特徴は、一定の物しか食べれない。人間のときと違い臓器や筋肉の機能が停止しているからだと言われている。アダムの場合は「花と虫」だった。そして傷が消えない。かわいそうに。せめて服に隠れる場所だったら良かったのに