December・4

ドーナルは生まれながらにして、選ばれし人間だった。祖父はアイルランドからの移民で、アメリカで貿易会社を始めた。貿易業は大成功を納め、彼は一代で財を築いた。だがその矢先、祖父は自分の屋敷から飛び降り自殺をした。ドーナルの父親である息子を残して。彼は二十三才だった。業務を引き継ぐのは充分な年だった。有能な息子はますます事業を発展させて行った。 ドーナルは母親はいなかった。寂しい思いはしたことはなかった。何人ものメイドと、父親に愛されて育ったからだ。学校には行かず、父親は有能な家庭教師をつけた。元々ドーナルは聡明だったので、成績は優秀だった。学校に行っていたら飛び級をしていただろう。父親はドーナルを溺愛した。

「友だちなんてお前には必要ない。周りは愚鈍なやつらばかりだからな。お前のお爺さんも、私にそう言ってくれたんだ。ドーナル。お前は選ばれて私のところにいるんだよ」

ドーナルもそれは嬉しかった。ドーナルが五歳の頃、父親が突然、産着に包まれた赤ん坊を胸に抱いて帰ってきた。ふわふわのフリルがついた産着に包まれた赤ん坊を、ドーナルは不思議そうに見つめた。父親はドーナルの頭を撫でて笑った。

「かわいいだろう。ドーナル。お前の妹だよ」

「僕の、妹・・・」

「エリだ。仲良くするんだよ」

エリ。とドーナルは赤ん坊の名前を呼んだ。ドーナルは選ばれし子供だった。そう。悪徳と異常な血に選らばれていたのだ。突然赤ん坊連れてくる父親。そこが既に異常だった。

エリとドーナルは広い屋敷の中でぬくぬくと、父親に愛されて育った。エリはドーナルの後をついて回った。ドーナルもエリを心から愛した。エリの小さな手を握って、抱きしめて、愛しているよ。と囁いた。エリの金色の髪の毛と青い目は人形のようだった。 ある夜。ドーナルは喉の渇き覚えて目が覚めた。夜中の十二時。ドーナルは一人ベッドから降りてキッチンに向かった。途中、エリの部屋の前通る。エリの部屋の扉が少しだけ開いていた。灯りが漏れている。ドーナルはそっと中を覗いた。 父親がエリのベッドの上にいた。そしてエリの体の上に覆い被さっていた。父親は裸だった。エリの小さな手が父親の腕の下から見えた。父親は息を荒げて、エリに体を擦り付けていた。ドーナルは思わず後ずさった。ギィ。と扉が軋んだ。父親は、ドーナルと同じ赤い髪の毛の間から青い目を覗かせて、こちらを見た。

「ドーナル?ちょうど良かった。こっちへおいで」

ドーナルは十一才で、エリは六才だった。父親は自分の性的玩具にするために、どこぞの女にドーナルとエリを産ませて、この屋敷で育てていたのだ。祖父の代からそれは続いていた。 父親は同じ趣味の仲間たちを呼んで、狂乱のパーティを開いた。ドーナルは何人もの大人たちの前で父親のぺニスをくわえた。たまに他の男たちのぺニスも扱いた。女のヴァギナも舐めた。エリも大人たちの相手をした。エリとドーナルは大人に挟まれながらも、見つめあっていた。お互いがいるから恐くなかった。

「今日はお前達で愛し合っているところを見せておくれ」

ドーナルが二十歳で、エリは十五歳のときだった。二人は父親と大人達の前でセックスをした。 エリの目は透明で、幼い頃と変わりなかった。エリの精神はとっくの昔に成長止めていた。

「兄さん。気持ちいいわ。大好きよ」

「エリ。俺も気持ちいいよ」

二人は抱き合ったまま耳元で囁いた。美しい二人の兄妹のセックスは、父親と大人たちを楽しませた。

次の日の朝。エリは首を吊って死んでいた。ドーナルはエリの死体を呆然と見上げた。ドーナルが可愛いいネグリジェだね。と誉めたネグリジェを身につけていた。細い白い首に巻かれた荒縄をじっと見つめていた。 父親はエリの死を嘆き、葬儀が終わった夜に睡眠薬を大量に服用して自殺した。 後に取り残されたのは、完全に悪に魅了されたドーナルだけだった。祖父が飛び降り自殺をしたのも、父親をずっと性玩具にしていたからだと理解した。

ドーナルはセックス依存症だった。ほとんど毎晩コールガールを呼んでセックスをした。男も女も関係なくセックスをした。ただ、エリに逢いたかった。エリを越える存在はなかった。 ある夜、金髪の痩せた娼婦の首にスカーフを巻いてセックスをしていたら、うっかり絞め殺してしまった。最初恐怖を覚えたが、次の瞬間、死体はエリになっていた。エリは両腕を伸ばして、笑った。恐怖は完全に消えた。

「兄さん。逢いたかった。また愛してちょうだい」

「エリ」

ドーナルは泣きながらエリを抱いた。端から見れば娼婦の死体を抱いていた。殺せばエリに逢える。それがドーナルの生きる意味となった。ドーナルは一流企業に就職した。一等地に一軒家をかまえた。地下に駐車場を作った。殺した後は寝室から地下に続くエレベーターに死体を担いで乗り込み、誰にも目撃されずに車に死体を運びいれることができた。

 

「三日ぐらいは楽しめるよね。よろしく」

ドーナルはアンの死体の額にキスをして、微笑んだ。