悦楽共犯者・3

「 何だ。これは」
ミタカのデスクの上に置いてある小さな小瓶を俺は手に取った。中には黒い液体。きらきらと光るラメが見える。あぁ。と俺は気付いた。
「 将軍。知らないんですか?それはマニキュアですよ」
ミタカは無自覚に俺を微妙に苛立たせる言い方をする。俺はそれに気づかないふりをして、そうか。と言った。
「 あまり女の物を見る機会はないからな」
「 女性はちょっとしたところを気使ってますからね。爪も手入れしなければならない。大変ですよ」
「 で、何でお前がこれを持っているんだ」
「 別にそんなのどうでもいいじゃないですか。よかったらそれ、あげますよ」
俺はそのマニキュアと、ミタカの顔を交互に見た。ミタカは真顔で言った。
「 そんな嫌な顔しないでくださいよ・・・団長の爪って見たことあります?」
「 指導者の?何でそんなもの見なきゃならんのだ」
「 僕、一回だけ見たことあるんですけど、すごくきれいな爪の形してるんですよね。きれいな爪の形ですね。って誉めたら喜んで言ってたんです」

ありがとう。爪はね、お母様にそっくりなのよ。きれいでしょう?

高貴な身分から生まれたから、爪すら美しいのか。俺はレンの爪を思い出す。裸は何度も見ているが爪なんて分からない。俺はミタカの顔を見て言った。
「 分からん」
「 そんな難しい顔で言わなくていいですよ・・・将軍ならいつでも見れるじゃないですか」
ミタカは行ってしまった。俺は手の中の小瓶を見つめて、レンのことを想った。

「 んっ・・・・はぁ、あ、んぅ・・・・」
レンは艶めいた声をあげている。俺はレンのそこに顔を埋めて、レンの味を堪能していた。舌を奥深くまで挿し入れて、ゆっくりと動かすと、こり。と小さな箇所に当たった。とたんに、レンはびくりと体を震わせた。俺はそこから顔をあげる。薄い陰毛に鼻を埋める。レンは手を伸ばして俺の髪の毛に触れた。
「 そんなとこ・・・」
恥ずかしそうにレンは呟いた。俺はレンの傷だらけの腹や、太股にキスをして笑った
「 いい匂いだ。お前の体は、どこもかしこもきれいだし」
俺はレンの顔を見つめ、額にキスをした。俺は達はもう既に愛し合ったあとで、互いに果てた後だった。明日から遠征が決まっているのでしばらくレンを抱けなくなる。一回だけだと物足りない感じがする。それはレンも俺も同じだった。
「 今度は俺の舌でいくといい」
「 ん・・・」
レンは枕に顔を埋める。俺は再びそこに顔を埋める。さっきより濡れているようだ。舌先で先程の箇所にぐりぐりと刺激を与える。
「 あっ・・・・!!やぁっ・・・・!!!」
身悶えるレン。これをしてるとどんな顔で感じてるか見れないのがおしい。俺も興奮してきて、さらに深く顔を埋めて、堪能した。甘い蜜のような味が口の中に広がる。
「 あ、ハックス・・・」
レンはため息とともに小さな声で俺を呼んだ。びくんっ。とレンの腰が痙攣した。俺はそこから顔をあげた。レンは涙をこぼし、頬を赤らめて、呆けた顔をして俺を見ていた。赤い唇から涎が垂れて顎を濡らしていた。とろんとした目で俺を見上げる。俺は額にキスして、髪の毛を撫でてやった。
「 いい子だ。ちゃんといけたな」
「 ハックス・・・好き」
抱きついてくるレン。俺も耳元で囁く。
「 俺も愛してるよ」
急にレンは起き上がって、俺にのしかかってきた。笑っている。レンは微妙に俺より背が高いので体重もある。その重みは嫌いではないが、レンをたしなめた。
「 どうした。レン」
レンは、得意気に笑った。
「 今度は私がしてあげる」
「 えっ」
レンは体を下にずらし、俺のぺニスをいきなり胸で挟んできた。それは初めてだったので、俺は思わず声をあげた。
「 おわっ」
ふふ。とレンは笑って、挟んだぺニスの先端を舌でぺろりと舐めた。
「 初めて見たわ。さっきの顔。私の胸、好きでしょう」
俺はベッドに顔を埋め、ああ。と呻いた。
「 好きだよ」
「 照れてるの?」
レンは俺のぺニスを挟んだまま、胸を上下に動かし扱いてくる。俺は頷いた。
「 ハックス。かわいいわね」
レンは俺のぺニスを口に含んだ。俺はその感触に身を委ねた。

ふ。と目が覚めた。夜中の一時。腕の中ではレンが静かな寝息たてていたが、俺が起きた気配で目が覚めたらしい。ん・・・と掠れた声をあげた。
「 起こしてしまったな。すまない」
髪の毛を撫でてやりながら言うと、レンは首を横に振った。
「 いいのよ。遠征前はいつも眠りが浅いから。起きちゃうのよ。」
俺はレンの額にキスをしてやった。二人で起き上がる。あ。と俺は思い出した。
「 そうだ」
「 どうしたの」
俺はベッドから降りて、かけていたコートのポケットから、ミタカからもらったマニキュアを取り出した。
「 明日の遠征が上手くいくように、俺が塗ってやろう」
「 なぁに?」
怪訝そうな顔のレン。俺はベッドに戻った。ベッドの上に膝を立てて座る。
「 俺の脚の間においで。俺に背を向けて」
言われた通りにするレン。俺はレンを後ろから抱きしめるようにして、手を取った。
「 本当だ。ミタカの言う通り、きれいな爪の形をしている」
「 そうでしょう」
レンは嬉しそうに言った。俺はマニキュアをレンの爪に塗ってやった。一本一本、丁寧に。レンは俺の手元を見ながらため息をついた。
「 上手ね」
「 きれいだろう。こういう作業は好きなんだ」
レンの白い指先に、黒のラメのマニキュアが塗られていく。十本終わると、レンは笑った。
「 ありがとう。きれいね」
「 気づかなかったけど、銀のラメの他に、金のラメも入っているな」
「 本当だ・・・」
レンは自分の爪をうっとりと見つめて言った。
「 星空みたいね」
「 ・・・そうだな」
俺はレンの耳元で囁いた。
「 今日は、その手で勝利してくるんだ」
「 当然よ。勝つわ」
俺は笑って、頬にキスしてやった。くすぐったそうに笑うレン。

レンの指先の星空は、とても美しかった。

題「 星空」