悦楽共犯者・1

私は指導者として君臨している。この世界を支配するために。私は騎士団長になるべくして生まれてきたのだ。余計な物など何もいらない。
「女なんか殺されるわけにはいかねえよ」
私はフォースの力で、そう言った敵の首をへし折ってやった。敵はばたりと倒れた。死体を一瞥して、髪の毛をかきあげて振り向くと、ハックスが表情を変えずに私を見ていた。
「何を見ているの」
私はなるべく平静を装う。でも声が震えた。くそ。私は腹が立っている。ハックスはじっと私を見ている。
「行きましょう。指導者」
ハックスは私に背を向けた。私はそのオレンジ色の髪の毛を見つめる。ハックスは後ろで手を組んで歩いている。その手をじっと見つめる。ぴた。とハックスは歩みを止めて振り向いた。青い瞳はどこまでも冷えきっている。
「私も、いつでもあんな風に殺してくださいね」
ハックスは笑った。私は何も考えられなくなる。私は震える声で言った。
「あいつは私を女と言った」
「ええ」
「女なんかと言った・・・」
「そうですね」
ハックスはまた歩き出す。私はあの夜を思い出す。冷たい雨が降る夜。私とハックスと二人だけの夜だった。
私はハックスに触れられた。やめろ。と命令してもハックスはやめなかった。私にキスしてきた。ハックスの唇は渇き、冷えきっていた。指は冷たく汗ばんでおり、私の服を押し上げて胸に触れてきた。私は、やめろ。ともう一度言った。寒い夜だというのにハックスの額には汗が浮かんでいた。ハックスは切羽つまった声で言った。
「やめない」
私はその言葉とハックスの目を見つめて、抗うことをやめた。私は子供の頃を思い出していた。

お母様が歌ってくれた、昔の歌。耳元で囁いてくれた。

レン。私のかわいい娘。幸せになるのよ。

私の中に入ってくる。ハックスが私の上で動いている。私は天井を見上げて、お母様の歌を思い出していた。

Twinkle, twinkle, little star, 
How I wonder what you are! 
Up above the world so high, 
Like a diamond in the sky・・・

「レン」
ハックスは私の近くにいた。私のほうが少し背が高い。ハックスは私を見上げてため息をついた。
「悔しい」
私がそう言うと、ハックスは私を抱き締めてくれた。
「悔しがる必要はない」
私はハックスの肩に顔をうずめる。ハックスは何も匂いがしないが、汗の匂いは甘い匂いがすることを知っている。
「ハックス」
「何だ」
「きらきら星、歌って」
ハックスは私の頬にキスをすると、耳元で囁いた。

「夜に歌ってやろう」