スパダリていたむ×サキュバスアダムの冒頭

ツイッターは便利だな。とアダムはいつも思う。名前も匿名だし、顔も隠せるし、きれいに加工もできる。
「こう・・・・かな?」
アダムはベッドに寝転がって、自撮り棒を持つ。セットをしているスマートフォンで何枚も写真を撮る。ポイントは顔は絶対に見せない。服をめくり、胸を見せる。あとはジーンズも下げる。陰毛は昨夜バスルームで整えていたから、ちらりと見せるだけ。ペニスは見せない。アカウントが凍結してしまうから。
「よし」
アダムは服を整えて、一番よく撮れた写真を選ぶ。加工してきれいに見せて、ツイッターにアップする。あとは反応を待つ。待っている間にコーヒーでも飲もう。今日のスカイプの相手は・・・ジョージか。いつも自分のオナニー動画をスカイプで送ってくるんだよなぁ。ハンサムだからいいけどさ。お腹いっぱいになるし・・・・
ツィッターを見ると、三百リツイートに、五百いいね。中々いいな。やっぱりオッパイと陰毛を見せるといい感じなんだなぁ
「ふぅ・・・・」
満たされる。普段は隠しているサキュバスの尻尾を出して付け根を撫でる。気持ちいい。人のいやらしい欲望を感じるとアダムは満たされて幸せだ。
「あ、明日の制服準備しないと」
アダムは急に冷静になり、明日の仕事に行く準備をする。スーパーマーケットに務めているから制服を出しておかないと。髪の毛をかきあげながらため息をつく。人間のいやらしい欲望を感じれば満たされるから、食費もかからないし、サキュバスは楽だ。ずっとこういう生活を続けてきた。アダムはため息をつく。
「もっと、満たされたいな」

 

博士🍩×人造あだむの話の最後

それから、アダムとドーナルの不思議な共同生活が始まりました。
自分に起こったことが理解できず、アダムは呆然と過ごしていました。ドーナルは優しくアダムの世話ををします。
「もう君は、排泄もしないし、汗もかかない。でも永遠に生きれるんだ。素敵なことだよ」
ドーナルは、桃をナイフで剥いてアダムに差し出します。
「桃は甘くておいしいから。あんまり内臓に負担がかけずに食べれるよ。食べて」
アダムは差し出された桃を食べました。瑞々しく甘い桃でした。
「うまい・・・」
「良かった」
ドーナルは、アダムの胸に手を当てて様子を見ます。触診というものでしょうか。うん。とドーナルは笑います。
「順調だ。大丈夫だね」
ごほ。とドーナルは咳をします。アダムは聞きました。
「ずっと咳をしてる。病気か?」
ドーナルは笑いました。
「風邪が長引いているだけだよ」

アダムとドーナルは屋敷の外に出ました。アダムは村があったほうを見ました。
黒い煙が上がっています。何本もの敵国の旗が風ではためいていました。アダムはぼんやりと眺めていましたが、ぽつりと呟きました。
「妻も、娘も、みんな死んだ」
ドーナルは黙って聞いていました。ごほ。と咳をします。
「涙も出ない」
「もう、そういう器官はないからね」
ドーナルはアダムの背中を撫でました。アダムは、ドーナルによって改造された自分は、前の自分と違いました。感情の起伏が少なくなっていました。激情にかられて、妻と娘の後を追うこともできず、自分の体に勝手なことをしたドーナルに、手をかけようという気もちにもなりませんでした。
「部屋に戻ろう」
ドーナルに促されて、部屋に戻りました。眠りにつく前に、ドーナルは桃を剥いてくれました。差し出された桃を、アダムは直接食べました。ドーナルは驚いた様子でしたが、そのまま最後まで食べさせました。食べ終わった後、桃の汁で濡れたドーナルの指をアダムは舐めました。ドーナルは黙ってそれを受け入れました。
「お休み。アダム」
ドーナルはアダムの額にキスをしました。既にアダムは眠らなくてもよくなっていました。でも、この時ばかりは眠りたいと思いました。妻と娘の夢を見たいと思いました。自分の胸を撫でて、アダムは暗闇の中ため息をつきました。

次の日は、とてもよく晴れていました。アダムの部屋は日差しが入り、とても明るく、暖かでした。
「おはよう。アダム」
ドーナルが桃を持って部屋に入ってきました。アダムは聞きました。
「ドーナル。顔色が悪い」
ドーナルは笑いました。そして咳をしました。いつもよりひどそうです。げほ。と一際大きく咳をすると、床に血が落ちました。
「ドーナル!」
アダムはドーナルに駆け寄りました。ドーナルはタオルで口を拭うと、はは。と笑いました。
「あんまり時間がないみたいだ。もっと持つかと思ったけど」
「死ぬのか。ドーナル」
ドーナルは笑うだけです。アダムは震える声で言いました。
「僕に、永遠の命を与えて自分は死ぬのか」
「・・・すまない」
「また一人になってしまう」
アダムはドーナルを抱きしめました。ドーナルはアダムの耳元で囁きました。

この戦争は、負ける。でもここは大丈夫。地下がシェルターになっているから、俺が死んだら君はそこに行って。

ドーナルはアダムの髪の毛を撫でました。にこりと笑います。
「また、会えるよ」
アダムはドーナルの唇にキスをしました。しゃべるのもつらそうなドーナルは目を閉じました。

その晩、ドーナルはアダムの腕の中で息を引き取りました。アダムは暗闇の中でいつまでもドーナルの体を抱きしめていました。敵の国の爆撃機がやってくると、ラジオが告げてきます。アダムはドーナルを抱き上げると地下室に行きました。

ドーナルをソファーに寝せて、アダムは床に座り込みました。たった二週間ぐらいしか一緒にいなかったけど、ドーナルはアダムにとって神様のような存在でした。
衝撃が地下室を襲います。でもドーナルの言う通り、地下室は揺れるけど、頑丈でした。
「ドーナルから聞きたかった。僕が生きている意味」
アダムは自分の膝に顔を埋めました。どれぐらいそうしていたでしょうか。アダムはドーナルの額に毎日毎日キスをしました。ドーナルの体はだんだん朽ちていきます。アダムはずっとドーナルの髪の毛を撫でて、呟きました。
「また会えるんだろ?早く会いたい」
桃も食べたいな。とアダムは笑いました。

アダムが膝に顔を埋めていると、地下室の扉が開きました。アダムは驚き、身を潜めました。
「誰か、いますか?」
階段を降りてきたのは男です。アダムは男の顔を見ました。
「あ・・・」
そこにいたのは、ドーナルでした。髪型や着ているものが初めて見るものでしたが、ドーナルそのものでした。
「ドーナル」
アダムが言うと、男は、えっ。と驚いた声をあげました。
「何で僕の名前を・・・あなたは」
「アダム・・・」
「アダム・・・いい名前だ」
ドーナルにそっくりな声で、男はアダムの名前を呼びました。アダムは胸がいっぱいになりました。
「ドーナル。何で僕はこの世界に生まれてきて、生きてるんだ?」
ドーナルは驚いた様子でしたが、やがて笑いました。
「幸せになるためですよ。当たり前です」
ドーナルは手を伸ばしました。アダムの手を握ります。地上を指さしました。
「俺と行きましょう」
アダムはドーナルとともに、地上の眩しい光を目指して、階段を登りました。

 

 

 

 

 

博士🍩×人造あだむの話の続き

どれぐらい経ったでしょうか。

次にアダムが目を覚ましたとき、アダムはベッドの上にいました。天井を見上げていると、咳をする音が聞こえました。
「気がついたかな?一週間君、ずっと寝てたよ」
声の主を見ると、赤い髪の毛の男が立っていました。アダムはその男を見て驚きました。
錬金術師・・・」
その男は昔から無気味な噂がある男でした。森の奥に住み、怪しげな実験を繰り返しているらしい。墓を暴き、死体をつなぎ合わせて新たな生き物を生み出しているらしい・・・アダムたちはたまに車に乗って街に出かける彼を、錬金術師と噂しました。アダムの村で車を持っているのは、この男だけでした。あいつは、怪しい錬金術師だ・・・・近付かないほうがいい。
錬金術師と呼ばれた男は、はは。と笑いました。
「俺は足や手を失った人たちのために、義足や義手を作る仕事をしているだけだよ。説明するのが面倒だから黙っていたけど・・・」
義手や義足はアダムにとってまだまだ馴染みの薄い物でした。手や足を事故で失った者は、ずっとそのままだったからです。日焼けして、農作業しかしていない自分と違い、清潔で色が白い男は本当に学があるように思えました。男は咳をしながら自分の名前を言いました。
「俺はドーナル。君は?」
「アダム・・・・」
アダムは自分の名前を言いながら、胸を撫でました。大きな傷跡に気付いてアダムは驚きました。
「これは・・・何だ?」
「新しい心臓にしたんだ」
「えっ?」
「そもそも何で、君たちの村が侵略されてるのに、この屋敷は侵略されてないと思う?」
ドーナルは笑っていました。アダムは理解ができずに怖くなりました。首を横に振りました。
「分からない・・・怖い」
「ある意味錬金術師というのはあっているのかもしれない。俺は国から補助を得て、新たな人間を作るための研究をしているんだ。だから侵略されなかった」
「新たな、人間」
ドーナルはアダムに近寄り、寝ているアダムの額を撫でて笑いました。美しい青い目は、とても優しい目です。
「暴行を受けて君は死にかけていた。内臓も、声帯も、心臓も傷ついていたら、移植したんだ。大成功だ。目も見えなくなっていたから新しい目にしたよ」
アダムは目を見開き、ドーナルを見ました。ドーナルは笑っています。ふと顔をそらすと咳をしました。咳が収まると、ドーナルはもう一度アダムを見つめ、額にキスしました。
「きみはずっと僕のそばにいるんだ」
アダムは、ただ呆然とドーナルを見つめるしかできませんでした。アダムは死ぬはずでしたが、ドーナルによって新しい命を与えられたのでした。

 

博士🍩×人造あだむの話の冒頭

昔、昔あるところにアダムという男がおりました。アダムは背が高く、気持ちの優しい男で、真面目で働き者でした。贅沢な暮らしができる稼ぎはありませんでしたが、優しい妻と、生まれて半年の娘がアダムにはいました。文句一つ言わずアダムに寄り添う妻と、抱き上げると声をあげて笑う娘。アダムは二人が愛しくて仕方ありませんでした。アダムは自分の人生は、とても幸せだと思っていました。

ですが、そんな幸せな人生は突然終わりを告げました。戦争が始まったのです。

アダムが住んでいた国は、敵国の兵隊が攻めてきて侵略されました。
寝ていたアダムと家族は夜中に突然ドアを壊して侵入してきた兵隊たちにより、起こされました。
アダムは殴られ、床に叩きつけられました。何もしていない、無抵抗のアダムを兵士たちは笑いながら嘲り、殴ったり、蹴ったりしました。アダムの妻は悲鳴をあげ続けました。ベビーベッドで泣き叫ぶ娘に手を伸ばしましたが、兵士が横から笑いながら娘を抱き上げました。そして思い切り娘を床に叩きつけました。妻は絶叫しました。娘はもう二度と、声をあげませんでした。
アダムは片方の目の前が見えなくなってきました。それは兵士がアダムの目をめがけて蹴り上げたからでした。銃底で激しく顔を殴られ、腹を蹴られてアダムは血を吐きました。
妻は何人もの兵士に犯されました。アダムは声が出ませんでした。声帯すら傷つけられるぐらい、喉も蹴られたからです。兵士たちはアダムの目の前で妻の首を締めて殺しました。
アダムは、そのまま意識を失いました。

再びアダムが目を覚ましたとき、辺りはすっかり朝でした。アダムは這いつくばって外に出ました。なんとか立ち上がりましたが、片方の足が折れている様子です。アダムは辺りを見回しました。
家は破壊され、村人たちは全員死んでいました。アダムは呆然と辺りを見回しました。生き残っているのは自分だけの様子です。アダムは再び倒れ込みました。大声をあげて、泣き叫びました。村人たちが流した血溜まりの中、アダムは哀しみに暮れました。声を絞り出しました。
「・・・・・殺してくれ・・・・」
足音が聞こえました。アダムは顔をあげました。限られた視界の中で現れのたのは兵士の物とは違う、黒いスラックスを履いた二本の足でした。げほ。と咳をします。
「・・・見つけた。俺と行こう」
男の声です。男は咳をしながらアダムを自分の肩に寄りかからせました。以外に力持ちの様子です。アダムは自分の隣の男の顔を見ようとしましたが、赤い髪の毛がちらりと見えただけで、よく見えませんでした。
「頑張って歩いて。着いたら手当してあげるから」
アダムの目の前に、大きな館が現れました。
「こっちに来て。すぐに手当できるように」
男に導かれて、アダムは白い壁の部屋にたどり着きました。ベッドに仰向けに寝かされると、アダムはそのまま気を失いました。

美大生ドーナル×シングルファーザーアダムの最終章

ドーナルがアダムに愛を告白してから丸一日が経とうとしていた。ドーナルは夜勤のアルバイトをいれて部屋には戻らなかった。それは前から言っていたことだったのでアダムもわかっていた。
(偶然でも助かった・・・)
朝方に戻ってきたドーナル。ローズは保育園。アダムは大学に出勤している。とりあえず会わずに住む。ドーナルは合鍵を使って玄関を開けた。廊下を歩く。
「おかえり」
リビングから声をかけてきたのはアダムだった。ドーナルは途中コンビニエンスストアで買ってきた買い物袋を盛大に落として、中身をぶちまけた。ああ。とドーナルは呻いて中身を拾う。アダムもそれを手伝った。アップルジュースをドーナルに渡してくる。ドーナルはそれを受け取った。ぼそりとアダムは呟いた。
「アップルジュース、うちにもあるのに」
ドーナルもぼそりと返した。
「ローズも飲むだろ。アップルジュースは」
「そんなに気を使わないでいいのに」
「な、なんで今日君がいるんだ?大学は?」
「インフルエンザ大流行で休講になった」
「そうか・・・」
ドーナルはため息をついた。
「ごめん。昨日変なこと言って」
恐る恐るアダムを見ると、顔が真っ赤だった。耳まで赤い。ドーナルは、アダム?と名前を呼んだ。
「・・・・大丈夫?」
「僕も好き」
「えっ」
「ドーナル。君のことが好きだ」
アダムは顔を赤らめたまま、ドーナルを見つめて言った。ドーナルは真顔のままアダムを抱きしめた。アダムも恐る恐るドーナルの背中に腕を回した。
「本当に・・・?」
うん。とアダムは頷く。
「初めて会った時から・・・好きだと思ったよ」
「良かった」
ドーナルはアダムの頬にキスをする。怯えているような、でも安心したようなアダムの笑顔。ああ。彼とこれからもずっといたい。彼を守りたい。
お互い同じ気持ちだったことが妙に照れくさく、もじもじと立ち上がる。アダムが言った。
「ドーナル・・・・今日、ローズはお泊り保育なんだよ」
「お泊り保育」 
「だから、今夜二人きりだよ」
アダムはそれだけ言うと、リビングに戻ってしまった。夜勤明けのぼんやりした頭と体にはあまりにも強烈すぎて、ドーナルはしばらく立ち尽くしていた。やがて自分が笑っていることに気付いた。これでは休みたくても、休めない。
「幸せすぎてやばいぞ」

「ドーナル・・・・」
深夜。ベッドで二人はお互いの体温を感じあっていた。ドーナルもそれほど経験は豊富ではなかったが、アダムは多分、妻としか経験がなかったのだろう。ぎこちなく、硬い体はドーナルの腕の中でだんだん熔けていく。
(逆にそれがセクシーだ)
ベッドに座ったドーナルに、アダムが向かいあって跨がる。さらけ出されたアダムの白い体にドーナルは興奮する。腹を撫で、胸にキスを落とす。
「あ、あぁ・・・・ドーナル、ぅ」
「愛してるよ」
「僕も・・・一緒にいれるのが、嬉しい」
二人は見つめあい、笑う。
ドーナルの頭の中のキャンバスに、個展に出す作品のイメージが浮かび上がる。アダム。とドーナルは名前を呼ぶ。何?とアダムはドーナルの髪の毛を優しく撫でて返事した。
「個展に出そうと思っていた作品、やっとイメージついた」
「良かった。どういうの?」
ドーナルは、アダムにキスしながら言った。
「君のような、女神を描こうと思うんだ。優しく、慈愛に満ちた女神だよ」

 

 

美大生ドーナル×シングルファーザーアダムの続きその3

一ヶ月が過ぎようとしていた。ドーナルはローズを世話して、思う存分絵画制作に没頭した。ただ、どうしても個展の作品ができない。イメージはあるのだが、形にならない。ドーナルはため息をついてキャンバスを見つめた。
「だめだ・・・こんなんじゃ・・・」
ドーナルは窓を見る。ここは前住んでいたところより、日当たりがいい。自分は本当についてるなぁ。
「よし」
ドーナルは椅子から立ち上がった。

「えっ?僕がモデルに?」
動揺するアダムをドーナルは制した。
「そうなるよね。わかるよ。だから気負わないで普段通りにしてほしい。俺のことは気にしないで」
「いや、でも・・・」
「パパ。どうしたの?」
ローズがやってくる。ドーナルはしゃがんでローズと同じ目線になった。
「そうだ。ローズも一緒に描いていいかな?モデルさんになってください」
「モデル、さん?」
「今から、パパと君を描かせてほしい。お礼に・・・きかんしゃトーマス描いてあげる」
「トーマスかいてくれるの?いいよ!」
ドーナルとローズのやりとりに、アダムは笑ってしまった。
「モデルにならざる得ないな。僕はトーマスが描けないから」

暖かな光が窓から差し込むリビングの床に座り込んで、ローズはトーマスのおもちゃで遊んでいる。アダムはトーマスが走る線路を組み立てている。ドーナルは少し離れたところでクロッキーを始めた。
ローズは懸命に遊び、父親にトーマスの絵本も読んでくれ。とせがむ。アダムは優しく、低い声で絵本を読んでやった。
ローズに向ける、優しい眼差し。ローズの頭を撫でてあげる、アダムの大きな手・・・ドーナルはそれらをスケッチし続けた。
ふと、アダムと目があった。アダムはにこりと微笑んだ。
ドーナルはその瞬間持っていた鉛筆を落とした。ローズが向こうに新しい絵本を取りに行ったのを見計らって、自分も床にへたりこむようにして、アダムに近付いた。床にあぐらをかいていたアダムの膝に手を置いた。
「ドーナル?」
「好きだ」
「えっ」
「アダム、君が好きだ」
「パパ。次これ読んで」
ローズが戻ってきた。ドーナルは立ち上がるとスケッチブックを抱えて転がるようにリビングを出て行った。アダムは呆然とその後ろ姿を見送っていた。
「パパ?」
「あ、ああ。ごめね。読んであげるよ」
アダムは我に返ってローズを膝にのせた。

美大生ドーナル×シングルファーザーアダムの続き

「あそこの美術大学の生徒なんですね・・・」
ドーナルは目の前にいるアダムを呆然と見つめていた。
「僕はこの先にある大学の非常勤講師で・・・社会学を教えています。実は、半年前に妻をを・・・事故で亡くしてまして」
亡くした。という言葉にドーナルは、はっ。と我に返った。
「そうだったんですね。お気の毒に」
ありがとうございます。とアダムは笑った。
「最初の一ヶ月で泣くのは終わらせました。僕はローズを立派に育てあげないと」
真面目だな。とドーナルは思った。どこまでも真面目だ。真剣さを感じる。深緑のセーターに、黒いスラックスという姿も清潔感がある。癖のある髪は肩まで伸びているが不潔な感じはしなかった。アダムの袖口を見ると小さな穴が開いていた。ドーナルは愛しい気持ちになる。多分穴にも気づかずに毎日目まぐるしく生活をしているのだろう。ドーナルは聞いた。
「ローズちゃんは何歳ですか?」
「もう二歳になります。最初はパートのシッターさんに頼んでいたんですが、最近保育園に行くようになりました。そしたらシッターさんが結婚して田舎に帰ることになりまして・・・今だけ僕が時短で働いて、ローズの面倒を見ています」
「時短も大変ですね」
はい。とアダムは頭をかいて頷いた。
「正直大変です。だからいっそのこと住み込みで働ける人を募集しようと思ったんです。ローズの面倒を見てくれる人を。僕の家は幸い大きくて一人なら住まわせられるし、食事付きで・・・・お給料はあんまり出せないけど・・・」
「給料はいらないです」
ドーナルはアダムの顔を見て言った。きょとんとするアダム。
「俺のアパート、取り壊されるんです。住むところもなくなってしまうんです。俺が責任持ってローズちゃんの面倒見ますし、食事もつけてくれるなら他に何もいらないです。だから」
ドーナルはアダムの手を握った。
「俺を、雇ってくれませんか?」
アダムは、こくりと頷いた。
「は、はい・・・・お願いします」
晴れてドーナルはアダムの家に住むことになった。ローズは金髪の可愛らしい女の子で、ドーナルにすぐに懐いた。
与えられた部屋はワンルームぐらいの広さで、快適だった。
(前より絵がかける時間ができるぞ。個展に出す作品も集中できる)
ドーナルは浮き浮きと自分の荷物を運び入れながら思った。それに・・・
ドーナル。とアダムが入ってきた。
「大丈夫?手伝おうか?」
「アダム。大丈夫だよ。ありがとう」
「今お湯を沸かしたんだ。コーヒーでもどう?」
「ありがとう。もらうね」
キッチンに向かいながらドーナルはアダムの後ろ姿を見つめた。気負わず名前で呼び合って、敬語も使わないでいこう。とアダムに提案されて、ドーナルは嬉しく思った。
(寝癖がついてる・・・)
ドーナルはそれに気づいて、胸が高鳴った。朝忙しくばたばたとローズを保育園に送って行ったのだろう。そう。アダムは・・・・アダムは
(めちゃくちゃかわいいんだよなぁ・・・・この人。なんか)
ドーナルは幸せを感じていた。いつかアダムは再婚するだろう。それまでずっといたい。とドーナルは思った。